2022-02-27

「養蚕」で地域を盛りあげるシルクのまち・岡谷市へ。【視察1日目】

実施日/2021年12月5日(日)  
場所/長野県岡谷市

「岡谷シルク」をブランド化し成功。
養蚕文化を地域の誇りにした先進地を視察。

 長野県の中部に位置する岡谷市は、明治から昭和初期にかけて生糸の一大生産地として栄え、高い品質を誇る生糸は海外にも輸出され、「シルク岡谷」としてその名を世界に轟かせるなど、養蚕の歴史と文化が息づく街です。

 しかし、そんな岡谷市でも一時期は養蚕農家がいなくなり、その文化も途絶えたかにみえました。が、改めて「岡谷にしかできないもの」「岡谷を感じるもの」「岡谷として誇りあるもの」という視点で見つめ直し、地域資源である「養蚕」に着目。官民連携により「岡谷シルク」のブランド化を図り、地域の活性化につなげ、成功している街です。

 その取り組みを学ばせていただくため、12/5から2日間にわたって岡谷市にお邪魔しました。

自分だけの特別な体験を提供「岡谷絹工房」。

 最初に訪れたのが、大正10年に建てられたというレンガ造りの瀟洒な建物。もともとは岡谷を代表する大製糸家「山一林組製糸」の事務所だったそうですが、現在は「オール岡谷産のシルク」の染め・整経・織りを担当する「岡谷絹工房」として活用されています。

 1階の作業場には20台ほどの織り機がありますが、そのほとんどが地元の方が自宅に持っていたものだそう。最初は3台ほどだったそうですが、自宅の改築や新築の際に出てきた織り機が集まって現在の数に。地域の暮らしに根づいた「岡谷シルク」の歴史を感じるエピソードでした。

 また、こちらでは「岡谷シルク」の染め・整経・織りの作業だけでなく、繭からつむいだ糸を使ってストールをつくる体験会を昨年実施したところ、あっという間に完売したそう。シルクをつくるだけでなく、そのモノを使って自分だけの一品をつくるという特別な「体験」までを“売り”にするという考え方はとても勉強になりました。

養蚕文化の誇りを受け継ぐ、ひろげる「岡谷蚕糸博物館」。

 続いて訪れたのは、岡谷市の「養蚕」の歴史と文化とともに、その誇りも受け継ぐ「岡谷蚕糸博物館」

 こちらでは養蚕の歴史はもちろん、明治時代から昭和初期まで隆盛を極め、日本の養蚕業を支えた岡谷の養蚕の歴史が、世界でも珍しい歴代の機械とともにわかりやすく展示されています。また、糸紡ぎの様子も実際に見られるなど、とても見ごたえのある内容でした。

 その中でも一番の魅力は博物館を案内してくださった髙林館長の養蚕愛あふれるトーク。笑いを織り交ぜながらのお話を聞いているだけで、岡谷の養蚕文化に対する誇りと深い愛着が感じられ、やはり「どのように伝えるか」という大切さとともに、「ヒト」の魅力も大切だと改めて実感したひとときでした。

官民連携の強い絆を感じた岡谷市のみなさんとの懇談会。

 そして、この日の最後は今回の視察を快く受け入れてくださった岡谷市役所岡谷蚕糸博物館諏訪信用金庫、そして2日目に見学させていただく新増澤工業株式会社のみなさまとの懇談会。

 この日の見学を終えての質問はもちろん、「養蚕」を取り巻く環境や、体験イベントをいかにひろめ、地域にも根ざした活動にしていくかという岡谷市の取り組みに対する質問にも丁寧に答えていただき、たいへん有意義な時間となりました。 

 そのなかでも印象的だったのが、官民連携の強い絆。さらに、岡谷市では市内のすべての小中学校はもちろん幼稚園、保育園などでも10年以上前から「養蚕」を学ぶ時間を取り入れ、岡谷市が誇る養蚕の文化を若い世代にも継承していこうと根気強く取り組んでいる点。

 最初は蚕の幼虫を見ると逃げていった子どもたちも今では待ちわびているそうで、そうした地道な取り組みを行い、土台をきちんとつくってきたからこそ今があるのだと改めて実感しました。

 「岡谷にしかできないもの」「岡谷を感じるもの」「岡谷として誇りあるもの」という視点で見つめ直し、現在の「岡谷シルク」があるということ。さて、更木では? 改めて自らに問い直す貴重な機会となりました。

(了)

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