2022-02-27

「養蚕」で地域を盛りあげるシルクのまち・岡谷市へ。【視察2日目】

実施日/2021年12月6日(月)  
場所/長野県岡谷市

岡谷市の養蚕文化を支える地元の金融機関へ。

 長野県岡谷市の視察2日目。最初に案内していただいたのが、「諏訪信用金庫本店」です。

 岡谷市では明治から昭和初期にかけて日本の生糸の一大産地として栄えた歴史と文化があり、現在では行政、地域、地元企業、金融機関などが一体となって「岡谷シルク」のブランド化を進め、成功しています。

 その取り組みを支えている「諏訪信用金庫」様から金融機関の目線で、行政や地元企業、地域とのかかわり方についてお話をうかがいました。

 特に今回は同庫の田中輝明専務理事から直接お話をおうかがいすることができ、学校に行く途中に嗅いだ養蚕独特の香りの記憶から、繭を担保に融資していた歴史までざっくばらんにお話をうかがえる貴重な機会となりました。

 その中でも地元に根をおろす金融機関として、行政や地元企業、地域の方といかに深い関係性を築いてきたのかというお話は興味深く、今回の岡谷シルクのブランド化においても、写真をふんだんに使った約300ページのブランドブック「シルク今昔ものがたり」まで手掛けているというお話には本当に驚いたと同時に、養蚕に対する深い愛情と誇りを感じました。

 更木活性化協議会もまだまだ一部のヒトたちの取り組みとなっており、地域の方をはじめ北上市全体にも知ってもらい、協力の輪をひろげていく土台づくりが重要だと改めて実感しました。この学びを今後に役立て、しっかり土台をつくっていこうと決意を新たにした時間となりました。

岡谷市の製糸機械を第一線で製造し続けるものづくり企業へ。

 続いて訪れたのは、「新増澤工業」様。その前身は明治29年に創業した「増澤商店」であり、当時世界一の生糸生産地を誇った岡谷市の製糸機械を第一線で製造し続けてきたものづくり企業です。

 製糸市場が衰退している現在は、明治から受け継がれてきた製糸機械の製造で長年培った溶接加工技術を活用。各種自動化装置の溶接部品を手掛け、世に送り出しています。もちろんその一方で、製糸機械の製造技術もしっかり受け継がれており、繭から糸をつむぐ作業を自動化する「FR型自動繰糸機」のシェアは国内で100%を誇り、近年は海外への輸出も行っています。

 その他、個人向けの糸繰機、脱繭機、煮繭機など、養蚕や製糸の作業を効率化する機械を数多く手掛けており、今回のプロジェクトでもそんな同社に「繭切機」や上蔟(じょうぞく=繭をつくる場所に蛹を入れる)作業を効率化する機械について相談しているのでした。

 今回の訪問では、改めて「新増澤工業」様の歴史とともに、現在進められている機械の進捗状況と、それを踏まえて現場の声も交えて意見交換が行われました。

 更木でも養蚕農家の人手不足や後継者不足などが課題となっています。そこで今回のプロジェクトでは新たに養蚕作業の効率化と省人化を実現する機械の導入を進めています。

 「蚕蛹」は、認知症への新たなアプローチになると期待が高まる新物質「ナトリード」の原料となり健康食品や医薬品に、さらに繭は生糸はもちろん更木の新しい特産品に……と更木の養蚕の可能性はひろがっています。「新増澤工業」様とのミーティングでは、導入に向けて進めている機械についての意見交換を具体的に行うことができ、とても実り多き時間となりました。

 まだまだヒトの手がかかる養蚕作業ですが、作業の効率化と省人化を実現する機械の導入により生産性を高め、収益アップにつながれば養蚕の仕事にかかわるヒトを増やすことができます。それが地域の雇用にも……。

 こうして刺激と学びの多い2日間の視察も無事終了。改めまして、岡谷市役所、岡谷蚕糸博物館、諏訪信用金庫、新増澤工業株式会社のみなさま、このたびは貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました。

▼視察の様子は、地元の新聞にも取り上げていただきました▼

(了)

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